逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
再訪
霧がかかっていた。
これほど白一面になるなど、滅多にはない。
そんななかを一人の青年が歩いてきた。
王宮の門番が誰何する。彼は一葉の紹介状を持っていた。
シュテルツ直筆の身元証明書だった。そして彼が来たならすぐ自分に案内するように、との添え書きもあった。
青年は長い廊下を歩いて行く。ときどき周囲の扉や窓を見やっている。何かを懐かしむような眼差しに思えた。
治療室の前に来た。
扉を開けると衝立があり、その奥のベッドにシュテルツが横たわっていた。
肩を包帯で分厚く巻かれ、その所どころに出血の染みがある。
青年が息を止めた。
足早にシュテルツの側に行く。
「おひさし、ぶりです、シュテルツ様」
膝をついて語りかけた。
「・・来てくれた、のだな」
目を開けてかすかに言った。
「はい」
シュテルツはかすかに笑って、
「よく来てくれた、オルグよ。きみに、頼みがあるのだ」
* * * * *
これほど白一面になるなど、滅多にはない。
そんななかを一人の青年が歩いてきた。
王宮の門番が誰何する。彼は一葉の紹介状を持っていた。
シュテルツ直筆の身元証明書だった。そして彼が来たならすぐ自分に案内するように、との添え書きもあった。
青年は長い廊下を歩いて行く。ときどき周囲の扉や窓を見やっている。何かを懐かしむような眼差しに思えた。
治療室の前に来た。
扉を開けると衝立があり、その奥のベッドにシュテルツが横たわっていた。
肩を包帯で分厚く巻かれ、その所どころに出血の染みがある。
青年が息を止めた。
足早にシュテルツの側に行く。
「おひさし、ぶりです、シュテルツ様」
膝をついて語りかけた。
「・・来てくれた、のだな」
目を開けてかすかに言った。
「はい」
シュテルツはかすかに笑って、
「よく来てくれた、オルグよ。きみに、頼みがあるのだ」
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