逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「いったい何があったの。それでなぜ私の名前が出てくるのか教えてほしいわ」
「もう遅いのよ、どうにもならないのよ」
 投げやりに返す。
「あの男はラプターという名前よ。最初は何者なのかわからなかった。でも言葉巧みに話しかけてきて」

 屋敷の使いで外へ出たときに声を掛けられたのだという。
『おい、ちょっとでも時間があるならそこらの店に入らないか。甘い物でもおごってやるぜ』

「それで、あなたはついて行ったの? そんな初対面の訳の分からない男に」

「退屈だったから。何か面白い話があるのかな、と思って」
 不貞腐れたように言う。どこか焦点の合わない目をしていた。


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