逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「あの、私達はどこへ連れて行かれるのでしょう」
 不安げに女が聞いた。

 馬車はかれこれ二時間走っている。フレッグ領から借りた馬車だった。
 窓はカーテンが閉められ外が見えない。

 座席にいるのはこの女と向かいに兵が二人、彼らに脇を固められている若い男の四人だ。

 恐る恐る聞いた女に返事はない。
 無視するような兵に、

「答えてくれたっていいじゃないか。口が減るもんじゃないだろう」

「なんだとっ、お前はそんな口が利ける立場か」
 一人が怒鳴り、もう一人が、
「まあ狭い馬車で口論もないものだ」
 
 女を見やると、
「もう一度聞くがお前の名前はネイラ、こっちは息子のティムでいいのだな」
「はい」

 馬車は速度を落とした。
 御者が座席に向いて、
「もうすぐ着きますが、どこへ停めますか」

「表の門は駄目だ、罪人を乗せているからな」

「じゃあ裏門ですね」
「そうだ、そこから入って待機だ。このティムの罪状がはっきりするまで馬車にいろとの指示だからな」

 罪状! ティムとネイラが色を失った。
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