逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「まとわりつくなだとっ？　おい、誰に向かって言っているのだ。お前は命じられたことも出来ないくせに。あの女を、ソフィー・ラクレスを連れて来いと言っただろうが」
「す、隙がないのよ。何度か誘ってみたのよ、外へ買い物にでも出かけないかと。でも今はお屋敷のことを覚えたいのだと言って」

「ふん、お前とは違うよな。お前はひと声かけたらのこのことついて来たじゃないか」
　と言ってから、
「・・屋敷のことを、覚えたいって？」
「そうよ、執事様にもいろいろ教わっているみたいよ、屋敷に出入りする高官とか、側近の顔と名前とか」
　
「ふーん、やっぱりな。ソフィーという娘はアーロンの・・・。噂でもアーロン・ハインツに溺愛されているというじゃないか」　
「え？」

「あ、いや何でもない。それならなおさらだ。是が非でもソフィーを連れ出すんだ」
「連れ出して、どうするの？」
「決まっているじゃないか、誘拐するんだよ。それでハインツ司令官様から身代金をもらうんだ、たんまりとな」
　エレナが目を剥いた。