逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ハインツ家の大広間に、家人一同が集まっていた。

 壇上には礼装のア―ロンと、純白のドレスをまとったソフィーがいる。
「えー、本日は、誠に記念すべき日でございます。我われ使用人は、この日を一日千秋の思いで・・」
 執事の声が詰まる、あわててハンカチを目頭に当てた。

 アーロンが、
「ああ気持ちは分かる、しかしもっと気軽にやってくれ。今日はごく簡単でいいのだ。つまり、今日からソフィーはわが妻になる。これからこの屋敷の女主人だ。彼女がこの家でうまくやっていけるよう、全員で支えてやってほしいのだ」

 ソフィーがビクッと震えた。わが妻・・、思わず反復する。

「さあ飲んで食べてくれ。遠慮はいらんぞ、これより先は無礼講とする。堅苦しいことは一切抜きだ」
 テーブルには豪華な料理が並んでいる。
 給仕人にも席に着くよう言い、厨房の料理人も呼んだ。
 文字通り一家を挙げての宴席となった。

 そんな様子を眺めながら、
「これで免罪符が出来たな」
 新郎が新婦の耳元に口を寄せた。
「・・え?」

「いつまで籠っていてもいいという事だ。家人に気兼ねなく惰眠をむさぼれるんだ、俺の横で。そうだろう?」
「・・アーロンさま!」
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