逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
祝宴
「センダへは馬で三時間。会見に要するのは四時間ほどでしょうか」
「では、遅くなったらセンダか帰路のどこかで宿泊することになりますか」

 ベッドの上のシュテルツを、オルグと宰相補佐が囲んでいる。

「いや、アーロン殿の性格では用が済めばすぐ帰って来るだろう。そこらを聞きにやらせている、間もなく返事が来るはずだ」
 出立を前に、アーロンは自邸に帰っていた。

「ところで手土産は準備できたのか、マリンドウやパレス王へ渡すものだ、遜色のない物を用意しなくてはな」
「はい、わが国特産の蒸留酒と貴重種の燻製肉を取り揃えました。向こうから何かを頂いても遜色はないかと」
「さすがオルグだ。それからセンダへ同行する護衛兵の選抜だが・・」

 そう言いかけたとき、
「大変でございます」
 一人の男が駆け込んできた。アーロン邸に向かわせた配下だった。
「ハインツ様のお屋敷では、今日ご婚礼が行われています」

「・・なに、それはいったい誰の婚礼なのだ?」
「それが、ご当主の、アーロン・ハインツ様のご婚礼です」

「っ、本当かそれは」
「そうです、なんでも内々の式だそうで。今ご一家を挙げて祝宴が開かれております」

 婚礼の相手は言わずもがなのソフィーだ。
 だがそんな予定は全く聞いていなかった。

「いやちょっと待ってくれ。だとしたら、アーロン殿は婚礼の翌日に出発することになるのか」
「はい」
「それも危険極まりない会見場へ、だぞ」

 言うなりシュテルツが絶句した。


          * * * * *
< 440 / 479 >

この作品をシェア

pagetop