逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
老兵の告白
 目を開けると、淡い影が入ってきた。

 洞窟の中は昼も夜も分からない。そんな中をろうそくが近づいてくる。
 先頭は長身の男だった。そのあとにヴェンが従っている。                         

「・・誰なんだ、あれは」
 負傷兵らはとっさ身構えた、男の来訪者などめったにないからだ。

 薄明りに照らし出されたのは壮年の騎士だった。
「見たことがない面体だな」

 男が近づいて来た、その容貌がはっきりわかる。
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