短編童話作品集

空き缶コロリ

 ここは小さな公園です。 隅っこには自動販売機が置いてあります。
10歳くらいの男の子がやってきました。 そして、、、。
カチャン。
 自動販売機にお金を入れましたねえ。
おやおや? 小さな声が聞こえてきましたよ。
 「ぼくはねえ、缶ジュース。 この自動販売機の中で冷たい風に吹かれながら誰かが買ってくれるのを待ってるんだ。」
缶ジュースの用ですねえ。

 カチャン。 お金を入れる音が聞こえました。
「誰かなあ? ぼくだといいなあ。」
缶ジュースは耳を澄ましてボタンを押す音を聞いています。
カチン、ゴロゴロ、カチャン。
「やったあ。 ぼくを買ってくれたんだあ。」
缶ジュースは飛び上がりたいくらいに大喜びです。
でも、、、。
プシュッ、ゴクゴク、ポーイ。
男の子は喉が渇いていたのか、ジュースを一気に飲み干すと空き缶をそこいらへポーンと放り投げて何処かへ行ってしまいました。
「おーいおーい、ちゃんとゴミ箱に入れてくれよーーーー。」
空き缶は必死になって何度も呼び掛けましたが、男の子はさっさと何処かへ行ってしまいました。

 空き缶が転がっているのは道端の吹き溜まりのような所です。
辺りを見回してみると同じように投げ捨てられた空き缶が転がっていました。
「私はいったいここで何をしているんだろう? 数日前にここへ来たけれど誰も拾ってくれないじゃないか。」
見ると気怠そうに文句を言っている空き缶が居ます。
「人間ってやつはなんてひどい生き物なんだ!
捨てる場所が無いからって俺の口に吸殻をいーっぱい詰め込んで捨てていきやがったぞ。」
コーヒー缶の口からは溢れてしまったタバコの吸い殻が、、、。
 そこへビニール袋が飛んできました。
「私は何のためにここへ来たのでしょうか?
昨日まではお店で品物を入れるために使われていたのに、、、。」
泥だらけになって寂しそうにしているビニール袋は他にもたくさん居るようです。
ぼくはなんだか悲しい気持ちになってきました。

 焼かれ叩かれて缶になった。
ジュースを詰め込まれてここまで運ばれて誰かが買うのを待っていた。
そして飲まれて捨てられた。
ぼくの人生、誰のため?
 いつか錆びて砂になる。
そしたらまたまた缶になる。
ぼくの一生、誰のため?
誰にもお礼は言われない。
使われて後は捨てられるだけ。
空しい人生、誰のため?
自分のために生きたいよ。
錆びた空き缶が歌っていました。
生暖かい風に吹かれながら、、、。
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