理央くん!大好き!かなさん!好き好き!

女子様、申し訳ありません

「ありがと!かなさん!」


「いいえ、お気をつけて。」


「はーい!」


かなさんは本名かなとさんで、苗字は、なんだったかな???


やばい、かなさんの苗字を忘れてるなんて!


お世話になってるのに申し訳ない!ごめん!かなさん!


かなさんはめーっちゃくちゃかっこいいの!


はっきり言って理央くんと並ぶレベルのイケメン!!


クールなタイプなんだけど、たまに優しい顔になるとこが好き〜!!


あ、あとね、私たちと2つしか変わらないんだよ!今なら普通大学1年生なんだけど、理央くんと私のために、大学は入っているけど(名門校!)ほとんど通ってないんだ!


「ありゃ、またかぁ。」


上履きを取ろうと思ったら画鋲が中に入ってたよ。


あれ、これ接着剤でくっついてるじゃん。ていうか理央くん気づいてなくてよかったぁ。


画鋲が入ってるなんて知られたら理央くん怒っちゃうかもしれないしね!


おやおや?これはラブなレターかな?
あ、違うな。ていうか逆だな??


だって死ねって封筒に書いてあるもん。


「えーと?白井秋へ
あんたが理央くんと釣り合うとでも思ってるの?

いやー思ってないんだけどなぁ。

あんたは死ぬべき人間、早く死ね!

うえー結構きついなー。

とにかく離れろ!死ね!

あらまー」


結構内容がすんげえなぁ。


まあ仕方ないんだけどね。理央くんのそばにいるのなら当然の義務のようなものだなー。


ていうか気づいてよかった!


この前踏んだ時結構痛かったもんなぁ。


えっと、この手紙どうしよっかな〜。


ヒョイ!


「わっ」


「林神?」


いきなり手に持ってた手紙がスッと抜けたと思ったら後ろに体育教師であり担任の、林先生、通称林神が立っていた。


「はやしーん!人のもの取っちゃダメなんだよ?ほら、かーえしてー!」


「ダメだ。」


「はやしーん、」


なんで気づかなかったんだろー……
バレたくなかったのに。


「いつからだ?」


「ん?」


「だから、この手紙とか嫌がらせ、いつからだ?」


「それ、言わなきゃダメ?」


「言いたくない?」


「あんまり〜。」


はやしーん、そんな目でこっちみないでよ〜。


別にそんな深刻じゃないんだから。


「見なかったことにして〜!お、ね、が、い!」


「ダメ。」


ちぇ、下ぺろは通用しないか〜。


「林神、別に私辛くないよ?しんどくもないし、毎日幸せすぎて死にそう!」


「知ってる。でもダメ。ちょっとこっち来て。」


あ〜、林神生徒指導室の方行くつもりなのかなぁ?


怒られた生徒みたいじゃん?
もう〜!


「はい、座って。ちょっと待ってて。」


げー!本当に深刻そうな顔になってるぅ!
やだなぁ。こんなつまんない話したくないや。


「ただいまー。」


「林神おかえり!ねーほんとに私なんでもないよ?」


「わかったわかった。じゃあおしゃべりしようか?欠席扱いは無しにしてもらったから。」


「おしゃべり!?」


「そうそう、はい、特別にお菓子とココアあげるから。」


さっきから甘い匂いがすると思ったらこれだったのか!


うむ、くるしゅうないな。


……て、そうじゃなくて。



ていうか……お菓子と飲み物で釣られた子供みたいになってない??


「で、最近楽しいことは?」


ほ、ほんとに楽しいおしゃべりだ!


「理央くんが笑った時!滅多に笑わないのにさ、最近ご飯食べながら笑うようになったの!」


「ご飯作れるのか?」


「うん、まあ多少はね。一応メイドとして!」


マネージャーはなんか可愛くないからメイドで決定!


あ、ちなみに私は住み込みなんだよ〜!



かなさんも一緒に!(いつも家にいるの夜しか見かけないけど……いつ寝ていつ起きてんだろ??)



家が元々近くって、理央くんのお母さんが死んじゃって、私が家のことしてるってわけよ!



かなさんもよく手伝ってくれる!


「へー調理実習の時差し入れしてくれ?うまいもんで頼む。」


「へへっはーい!」


「あとはなんかあんの?あ、理央のこと以外でな。」


「私林神と話すの好き!楽しいし、先生面白いもん。」


「そりゃーとっても嬉しいな。教師の生きがいだ。あとは?」



ねえ?私の気のせいなのかな??棒読みじゃなかった??


「えっまだ聞くの〜?」


「おもろいから。」


「えー、そうだなぁ、花の水やりとか?あと廊下に置いてある花の花びら落ちちゃってるやつあるじゃん?あれ拾うのも好き。」


「へーなんか秋らしいな。変わってる方だけどな。」


「えっひどくない?えっひどくない?」


あれ?このセリフ、どこかで……デジャヴだな。うん。


「まあでも先生方の話題に秋のこと出されること多いよ。」


「えっ?なんで?」


「花集めとかもな、結構あれ助かってるんだよ。あとは授業後に先生にありがとうって言いに行ってるだろ?あれだよ。死ぬほど嬉しいらしいぞ。俺も嬉しい。」



「へー!変わった先生がいっぱいいるね〜!」


「割と通常だ。教師なんかな、厳しくすればうざがられ、頑張れば頑張るほどうざがられ、授業で一発笑いを取ろうとしたら保護者からのクレームが来る。
結構ありがとうって言われる機会ないんだよ。」



「そっか〜。先生たちが嬉しいならよかったー!」



「呑気なやつだな。」



「そう?」


理央くんにもよく言われるんだよねぇ。


「そういや花のやつあるじゃん。あれな、秋が入学してくるまでな、無くそうかってなってたんだぞ。花びら散るだけだろうって。そしたら花びら拾う珍しいやつが入学してきて花を置くの継続になったんだよ。」



「そうなんだ、やっててよかったぁ。」



花なくなったら廊下寂しくなっちゃうもんね。


「んで?本題に入るぞ?」


「ん??」


いや、目の色変えたよね?今田舎でお茶飲みながらのんびり話す感じのほんわか〜ってした会話だったのに!


「誰だ?心当たりは?」


もう私の負けかな。残念だけど、


「多分3年かな?前たまたま聞いちゃってさ、話してるとこ。」


「どんな話?」


「普通に、あいつ死ねばいいのにー、みたいな?」


「うっわ」


林神のそんな顔初めて見たよ。びっくり。レアかも〜!


って、そんなこと考えてる場合じゃないや。


「林神、大丈夫なの。慣れてるし、いや、私そんな弱くないし!」


「慣れてる?どういうこと??」


あらーおめめが笑ってませんなぁ。


「もうずっとそうだったし!理央くんのそばにいるってことはそういうことなの!」



もうやけになってきた!



「友達は?」



「同級生とは普通に仲良いよ。男女問わずね!で、別に嫌がらせでの怪我とかない!だから大丈夫!」



「じゃあこれとこれとこれとこれとこれは?」



なに?早口言葉?



林神が指差すところは朝榊先生にも言われたところを含めてたくさんあった。



先生って名前がつくひとはもしかしたらいろんなところをよく見てるのかもなぁ。


「あっ変態とか言うなよ。生徒の安全を守るために見たんだ。しかも、今日でだいぶ増えてるじゃないか。」


「言わないよ〜!傷なんか知らないうちにできてるよ。こんなちっこい傷くらいさ。」


まああざというほどのあざでもない。手加減してくれてる先輩に感謝だ。



「あのなぁ、教師は生徒を守る立場なんだよ。相手が生徒だからっていじめたりはしないし、その3年の成績を下げるわけじゃない。でも教師としてお説教をする。だから言え。ここまで言ったなら。全部言え。」


「んな強引な……」


「早く言え。カウンセラーを呼ぶか?」


「いい、先生がいい。」


「そうだろ?だから俺がワンツーマンで話してやってるんだ。」


「あら、お優しい」


「……まあさ、最初の方は、割とうわさとか?そういうのだけだったんだけどね。次に手紙で今日みたいな内容書かれたりとか、あとなんか先生が呼んでるよーみたいなこと言われてそこ行ったら3年生の皆さんに囲まれたり?あと、今日の画鋲のこととか?あっ見てないか。」


「いや、ガッツリ見た。そして写真も撮ってきた。アルバムに入れて完璧に保存してある。」


「こ、こえー」


ストー


……


いや、なんでもない。


「んで、はいこれ、今までよく頑張ったねプレゼント。俺から上履きでーす!お前の上履き妙に汚かったろ?」


「わっ、林神神か!てかまあ名前に神ついてんだからそりゃそうか。」


「俺は別に本名に神ついてないぞ。」


「知ってる!」


「あと、まあこれも言っちゃうけど、お味噌汁かけられちゃったの。まあなんかお弁当をさ、中庭で食べてたら先輩っぽい人が水筒みたいな形のやつに激アツ味噌汁入れて私にぶっかけてきたの。あれは熱かったなー。あっちなみに林神がさっき言ってたくるぶしの火傷はそれだよ。」


「……」


「あれ、言っちゃわない方が良かったかな?」


目が死んでるし!


「それなんでもっと早く話してくんなかったわけ?」


「理央くんにバレると思ったから。」


「それは、理央に心配かけたくないからか?」


「そうだよ。何にも気にしてほしくないの。」


「あー、泣くな。……悪かった。」


「ごめん林神。ていうか泣いてないし、林神が謝ることなんてなにもないよ!」


本当に泣いてなかったのにな〜私そんなにすぐ泣かないんだよ?


困るなぁ。なくなって言われると泣きたくなるよね。


もうやっと落ち着いたってのにさ!


「まあとにかくさ、林神、絶対に何も言わないでね。」


「ああ、分かったよ。またなんか話したい時は言ってな。」


はーい!と元気に返事をしてドアを開けようとした時だった。


「それ、もっと詳しくお願い。」


ドアの開ける音と共に静かな声でまっすぐ見つめてくる彼の視線にごくりと喉を鳴らした。


「なんで、え?理央くん、どうして」


「体に傷があると思ったら、そういうことだったわけね。聞いてもこけたとか言って笑うし、朝俺に先に行けっていうのも一緒に行ったらいじめられてる証拠が見つかっちゃうかもしれないからだったんでしょ?」


あ、らら


しまった。バカなことした。


「……」


「はー……いつから聞いてた?」


林神がため息をついて頭をかいた。


「ずっとですよ。こんな人気のない廊下ならサボってたってバレないんですよ。」


ありゃ、理央くんったら、サボるなんてダメじゃない〜!


って言ってる場合じゃなさそうだな〜。


「あの人たちに何もしないで。お願い、理央くん。」



「なんで?」


「当然のことをしてるからだよ。嫌われて、憎まれて当然のことをしてるから。あの人たちは感情の出し方を間違ってるだけだと思う!」


「なんで嫌われて、憎まれて当然なの?」


「怒らずに聞いてくれる?」


「いいよ。」


「理央くんはとっても人気があるの。私の言ってること、ぜーんぶ本当だから否定しないでね!
まあだから、理央くんが誰かと一緒にいると、誰だろうって考えたり、羨ましいなぁって考える子はね、少なくないの。
分かってくれた?」


希望を持ち顔を上げると綺麗に首を振られた。


「全然わからん。俺はみんなと同じ人間。人といることは、いたいって思うのは当たり前でしょ?」


その通り!よく気づいたなぁ。


「そーなの!理央くんと私たちは同じ人間でほんっとにそれはそうなんだけど、やっぱり理央くんはすごいんだよ。成績もキープして、もちろん顔が好きっている子もいると思う。でもきっと内面含めてなんだよ。だからね、もっと誇っていいんじゃない?」


「ぜんっぜん誇らしくない。」


あれ??いい話したと思ったんだけど??


「もし仮にそうだとして秋が傷つくのは絶対に違う。そうだよね。林先生。」


「もちろんだ。それをお前に言ってもらおうと思ってな。」


「ん????」


「先生知ってたの?理央くんがいること。」



「ああ、割と早い方からな。まあ理央ならいいかと思って黙ってた。」


「じゃあなんでさっき初めて知った!みたいな喋り方したの?」


「あー、それは秋に怒られるかと思ってさ。」


いやいや、黙ってた方が怒るよ!?



しかもバラしてるし!


「まあさ、俺から言っておくよ。全校集会も開いていじめのヤバさを言うわ。最悪捕まりまーす!ってな!」


うわっ先生さてはドSだな???


ニコニコ笑顔がこっわーい!


「先生、めっちゃエグいことするやん??」


「『最悪捕まる』は、事実だよ。なぁ?理央?」


「はい、その通りです。」


妙に息あってるのなんなん??


「はい、まあこれで終わり!今2限目の半分でちょっと教室戻りにくいだろ。3限目で入れ。」


「えー!どこで待ってるの?ここ?」


「YES」


「林神もまってようよ!」


いや、このまま理央くんといると絶対怒られるしね??


「Noー!今からちょっと校長と話し合ってくるで無理でーす!理央、頼んだよ。」


「ウィッス」


なに、この刑事ドラマみたいな返事は……まあでも様にはなってるね。


一眼レフ構えたい。(発言やばし)


「これからは一緒に登下校するよ。俺の1年間一つ一つ無駄にしないで。」


「イエッサー!」


最後だなんて言われたら悲しくなってくる。しかも本人の前でだ。


理央はもう死を受け入れている。いつ死んでも大丈夫って顔をしてる。


私はもっと生きてほしい。


……ていうか


「理央くん怒らないんだね??」


そこがびっくりだよ。耳栓はめようと思ってポケットに手を突っ込んで待ってたのに。(おい)


「秋は悪くないし。でももっと早く言ってほしかった。」


「わっ理央くんごめんねぇ!!!泣かないで!」


「……ねぇ、俺が泣いてるように見える?」


「あっすみませんでした。」


潤ってすらなかった。とんだ自意識過剰だ!


あー恥ずかしい!


「でもね、理央くん、ありがとね!」


「なにが?」


「心配してくれて!」


やばい、嬉しいよ〜〜!!!


「その笑い方気持ち悪いってば」


「えっひどくない?えっひどくない?」


その日は基本その流れになってしまい、合計8回のデジャヴがあったのであった……。







































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