理央くん!大好き!かなさん!好き好き!

理央くんの入院

「理央くん!入院して長く生きよう!」


「わかった。」





「はやない???」


「なにが」


「いや返事!もっと『俺は残りの時間を有意義に過ごしたいんだ』とか言うと思ってた!」


「その感情がないわけじゃないけど、多分俺は別に学校に行きたいわけじゃない。秋がいてくれたら多分なんでもいいんだと思うよ。来るなって言っても毎日来るでしょ?」


「そりゃもちろん!!」


と、いうことは!



「じゃあ今からね!今ざっとメールで榊くんに伝えたから!!」


「うん、はや。てか榊くん、なんて呼び方してたっけ?」


「ううん、今日から!お世話になるしね!!」


「そっか。ていうかそこの手のあざは?」


「これ?どうもないよ〜!!私ったらちょうドジかも!!」


「はい、嘘無しで。実際は?」


「いや、別にそんなんじゃなくて、ほんとだよ?家庭科の時にちょっとね。調理実習でさ、私めっちゃ料理うまいでしょ?!
なんつって!へへへ!」


「そうだね。」


ありゃ


「そこはさ、否定してくれないと困るなぁ。こっちが恥ずかしくなるでしょ??」



「冗談だったんだ……」



そこに驚いちゃうんだね。理央くん。



「まあそれでね?まあ友達がすごーいって言って見てきたんだけど、その友達が作ってたスープがちょっとね。」



「……秋が怪我すんのはいい気しない。今後気をつけて。」



「はーい!」



「誤魔化さないでね?」



ぎゃー!凍ってしまうほど冷たい!目が冷たい!!



しかもその黒い笑みが怖い!!!



「イエッサー!!」



イエッサーはなんて便利な言葉なんだろう!!



全部誤魔化せるぞ!イェーイ!!



「じゃあ病院行くよ?かなさん呼んだから!」


「ウィッス。」



ガチャ!




「かなさーん!!突然だったのにごめんね?」


「いえ、気にしないでください。
榊先生にわたくしからも電話しておきました。もう病室の準備はお願いしてあります。」 



「さっすが!かなさん天才!!」


「ありがとうございます。」



かなさんはこの間のことからたくさん笑ってくれるようになったんだ!



かなさんはすんごいかっこいい!


「早く行こ……」


「はーい!!」


バタン!


あちゃ!また車のドアの閉め方乱暴にしちゃったよ!


「高級車は扱い難しい!」



「気にしなくてもいいですよ。」



かなさぁん!やさし〜い!!!



「ありがと!!」


「いいえ」


「でもこれからは楽になるよ!かなさん!私は歩いて病院行くし、理央くんは入院するから!これを機にゆっくり休んでね!」



「いえ、そんな。むしろ秋様を病院に送らせていただきたいんですが。」



「へ?なんで?」



「その、毎朝お二人を送るのがわたくしの生き甲斐でしたので。」



思わず目を丸くさせる。



「へ!そんなに楽しみに思ってくれてたの?!」



「……はい。」



ひゃー!照れてる!照れてるよー!!かなさんが!



無表情で(最近はよく笑うけど!)顔色ひとつ変えなかったかなさんが!



「お前喜びすぎ」


理央くん!そんな冷たい目で見ないでよ〜!!!(※言葉とイントネーションが合っておりません。)



「だってー!レアなんだもん!」


「もうつきますよ。」


「はーい!!」


かなさんったら〜!照れちゃってぇ!


……やばい、自分でもちょっと自分が気持ち悪いや。



「理央くん!覚悟はできた??」


「うん。」


「よし!……あれ?榊くん立ってる!」


手振ってみよ!


「窓開けましょうか?」


「ありがと〜!かなさん!」


「いえ」



「あっ榊くん手振ってくれたよ!」


「どうせ数秒後に会えるんだからいいじゃん。」



いや、そうだけどね??そこはさぁ?!



「つきましたよ。」


「ありがと〜!!」


「おはよう。理央くん体調は?」


「大丈夫です。むしろこいつの頭の検査してやってください。」


「僕もやりたいんだけどね。ちょっと検査機の空きがなくてね。」



ちょ、ちょっと待ったぁ!!



ガチの返信しないでくれるぅ!??



「さかきくーん……」


「榊くん?秋ちゃんそんな呼び方してたっけ?」



「ううん!今日から!やっぱ榊先生の方がいい?」


「いや、いいよ。僕もそっちの方が嬉しいかも。」



よしっ!これで榊くん呼びOKは出た!



「イェーイ!……って!そんな話してる場合じゃないよ!もう!」



「こいつ、自分が話し始めたって知ってるのかな。」



「知らないだろうねぇ。」



おじいちゃんとおばあちゃんがするみたいな会話しないで!



「わたくしもついていっていいでしょうか。」



「いいですよ。こちらへどうぞ。」



「ありがとうございます。」



病室どこだろう?1人部屋?それとも5人くらいいる部屋?



まあ理央くんならどっちでも大丈夫だよね。



「理央くん、理央くんって苦手なものとかあるの?」


「んー、特にはないけど。」


「そうなんだ〜!!」


「なんで?」


「なんとなく〜!」



理央くん!目が怖いよ!


凍りつきそうだよ!



「こちらになります。」


あっ1人部屋だ!


「ありがとうございます。荷物とかってここでいいんですか?」


「いいよ。じゃあ診察行こうか。」


「はい。」


「診察はここで待っていてもいいよ。」


「はーい!榊くんよろしく!かなさん話そ!」


「はい」


理央くんを見送って病室で話し始める。



ううん、私が話したいだけかもしれない。


「かなさん、どうしよう。」


かなさん、かなさんにこんなこと言っても、しょうがないのに、こんな無責任なことしてごめんなさい。


ごめん、ごめんね、かなさん。


今言わないと、私はまた潰れちゃう。



別に何かあったわけじゃない。


ただ、急激に怖くなる瞬間がある。理央くんが死んでしまうかもしれない、と。もう一緒にいれないかもしれないと。


「どう、しましたか?」


「……怖い、……寂しい、……理央くんに、死んでほしくない。」



こんなことをかなさんに言ったってしょうがないのに。


何言ってるんだろう。



何かして欲しいわけじゃないのに。




「ごめん、かなさん……ごめんなさい。」



「いえ、いいんです。あの……理央様は、秋様のことが大好きです。」



「え……?」


「おととい、秋様が熱を出された時、本当に心配そうにしておられました。

あの時実は、病院に向かっていたんですよ。看護師さんに聞いて、熱がたくさん出たことを知って、顔を真っ青にして……

……これはナイショの話ですよ。」


シーっと口に手を当てて周りをチラチラ見ている姿を見てどれだけ口止めされたかわかった。


「理央くん、理央くんは怖くないの?」



「……理央様は、こう言っておられました。

『秋を残していくのが怖い』と。

ずっと、こう言っています。」



……理央くん、自分の心配忘れてるなぁ。





「……かなさん。私、こんなことで泣いちゃ、ダメなのに。私は、笑ってなきゃ、……ダメなのに。 理央くんに言われて、私、……嬉しくて、……なのに、

あと1年あるって、思うたびに、悲しくて、

私、どうしよう。どうしたら……ーー」



ギュッ



え……?



「別に泣いたっていいから、俺怒らないし。」



理央、くん


「なんで……?」


「あんな声出してたらわかるし。」



「……」



「私、理央くんがいなくなるの……嫌。怖い。」



「知ってる。ずっと怖そうにしてたし。

……俺、別に死ぬの怖くない。ほんと。

秋は昔、俺がいなくちゃ、潰れてた。だけど、もう大丈夫。

今はさ、奏斗もいる。榊先生も。真田さんも。

秋の仲間はたくさんいる。」



だけど


……


でも、



「死んでほしくない。……私の前からいなくならないでよ。そしたら私、ずっと怒るから。……怒るからっ」



「ごめん、……ごめん。……約束、できない。

でも、大丈夫。

大丈夫だから。まだあるから。

思い出つくろう。

ごめん。それしかできない。

でも頑張って生きるから、それで俺が死んだら、その時は笑って。」



「うううぅ、っ、うあぁーんっ」



そんな最後みたいなこと言わないでよ。


「秋ちゃん。僕も最善を尽くすから。……でもね、頑張りっていうものには限度がある。今までだって頑張ってきたんだ。理央くんは秋ちゃんが嫌いな注射だって1週間に3回は絶対してた。ずっとね。」



「っ……うん、」


「だから、理央くんの言う通り頑張った時には、少し我慢してでも笑ってあげて。」


「っ、うんっ」



その時だった。理央くんが、笑った。




「ごめんね、秋、俺、余命、あと少しだ。」



……?


え、今なんて……なんて、言ったの……?


そんな、くしゃっとした笑顔、こっちに向けないで、お願い、だって、そんな


元気、だって。


昨日まで、元気、って、言ってたじゃん。


先生だって、そう、言ってて


「ごめん、黙ってた。昨日の夜、発作起きたんだ。」


「……発作?」


「ごめん。……言わないつもりだったけど、秋にそんな顔されちゃ、……言うしかなくなった。」



「……少し?なんでそんなこと、に。発作で、そんな」


声はかなさんのものだった。


ふと顔を見てみると真っ青だった。


敬語も抜けていた。



「……発作は、もうずいぶん起こってなかった。……だけど、そのせいで、心臓の負担が、より大きくなったらしい。

ごめん。」


「い、え、すみません、取り乱しました。」


かなさんはいつものような顔になっていた。



私は、プロじゃないから、上手く表情隠しができない。


これ以上困らせちゃダメなことなんか、分かってるけど、もう止められなかった。


「ごめんなさい、……聞かなくていい。

ごめんなさい。」



「……今言うべきじゃなかったね。理央くん。」


「はい……ごめん、秋、でも俺大丈夫だから。ごめん、でもあと、まだ少しある。大丈夫だよ。」


「わか、ってる。困らせてごめんなさい。

理央くんごめ……ーー」


そこで、私の意識は途絶えた。

















































































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