理央くん!大好き!かなさん!好き好き!

ごめんな、秋

「発作が昨日おきて、結構今、しんどいです。」


え、なに、何その目。


え?



「それ、本当?」


頷くと先生の顔は真っ青になった。


レントゲンの撮影も済ませた後だった。


「落ち着いて、聞いて。」


もしかして、と思った。



「余命が、早まりました?」


できるだけ笑って言ったつもりだった。


声だって、かすらないように言った。




先生が頷くのは見たくなかったくせに何を聞いてるんだろ、俺。



「ごめん。」


深く頭を下げられて、何も話せなくなった。



「先生、俺、秋のとこに行きたい。」



「分かった。」



病室は診察室と目と鼻の先だった。


「ーー1年あるって、思うたびに、悲しくてーー」


後はよく聞こえなかった。




なんで、泣いてるの。




ごめんな、秋。一緒にいられなくてごめんな。


もう無理だって、自分でも思うんだ。


今日かもしれないって、一年あったはずの寿命、なんでこんなにも早く終わりが来るんだろう。


本当に結構やばいんだよ。


よくなっている傾向が見えないんだ。


ごめん。


泣かせてごめん。




気づいたら抱きしめていた。



秋、ごめんな。


だって今もこんなに苦しいんだ。もう生きれない。


でも秋はもう1人じゃないんだよ。


俺じゃなくたって、そばにいれる人はいるんだよ。



「別に泣いたっていいから、俺怒らないし。」


ごめん、いつもこんな無感情な声出してごめん。


でも、こうしないと隠せないんだよ。


「なんで……?」


「あんな声出してたらわかるし。」



「私、理央くんがいなくなるの、嫌。怖い。」


そんなこと言わないでよ。


どうすることもできないんだよ。


俺のことちゃんと思ってくれて、ずっと一緒にいた主治医の榊先生でさえ、俺に頭を下げた。






そっか、母さんはこんな気持ちだったんだな。



ごめん、母さん、あんなこと言って。



昔は秋の立場だったからよくわかる。



死なないで


まだ一緒にいたい。



ずっとそんなことを思っちゃうんだよな。


隠してるつもりでも漏れちゃうんだよな。


わかるよ。






わかるからこそ思う。







秋、ごめんな。


本当にどうすることもできない。




だから、








だから秋、泣かないで。










今だ。今しか多分、俺は言えない。


「ごめんね、秋、俺、余命、あと少しだ。」



違う、これも嘘。


先生から全て聞いたわけじゃない。


察するに、俺はもう長くないんだろう。



昨日の発作でわかっちゃったんだ。



このまま毎日こんな発作が起きたら、俺の心臓はとても耐えられない。



「……少し?なんでそんなこと、に。発作で、そんな」



奏斗、ごめんな



今まで、照れくさくてツンとした態度しか取れなかった。



でも嬉しかったんだよ。



友達いなくて、やっとできて、本当に嬉しかったんだよ。母さんが死んでから敬語になったのは、ちょっとショックだったけど。







ごめんな、思い出なんかできない。そんな時間はない。






多分今日の発作で死ぬと思う。





それくらいに今、ダメなんだ。




息が苦しいんだよ。






ごめんな、2人とも。いや、林先生も、榊先生も、俺のことを思ってくれた人たち、みんな、







本当にごめんな。











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