甘くて優しい、恋の香り。

ダンス部の練習が終わり、みんなが制服に着替えて帰ったあと。

練習場にタオルを忘れてきたことに気づいて戻ったら。



「あれ?」



聡太先パイのジャージの上着が置いてあった。



(先パイも忘れたんだ)


さっき昇降口に向かって歩いて行くのを見かけたことを思い出して、私は走って追いかけた。



昇降口にはもういなくて。

校門を出て、駅に向かう道を走る。



(あっ、あれ、聡太先パイだ!)



そう思った次の瞬間。



「……えっ?」



隣に女の子がいることに気づいた。



聡太先パイが、楽しそうな笑顔を向けている。

遠目から見ても、その女の子が可愛いことがわかった。



(まさか、……彼女?)



そう思ったら、急に体から血の気が引いた。

今までうっとりしていた自分がものすごく恥ずかしく感じて。

何とも言えない腹立たしさと悲しさが一気に押し寄せてきた。



翼先パイの言葉を思い出す。



『他のやつにとられても知らないよ?』



気づいたら私、高校へUターンしていた。

< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop