頼れる年下御曹司からの溺愛~シングルマザーの私は独占欲の強い一途な彼に息子ごと愛されてます~
(もしかして……ヤキモチ妬いてる?)

 それに気付いてしまった私は、不謹慎かもしれないけど嬉しくなる。

 いつも頼り甲斐があって大人びてる竜之介くんが、ヤキモチを妬いている事が何だか可愛く思えてしまったのだ。

「……亜子さん、ちょっとこっち来て」
「え?」

 不機嫌なままの竜之介くんは急に人気の無い路地裏へと私の手を引いて向かって行く。

「ちょっ、竜之介くん? どうしたの――」

 そして、建物の影になって通りから見えない細い道へ入るや否や、

「――っんん!」

 いきなり抱き締められたと思ったら、強引に唇を重ねて来た。

 恐らく滅多な事じゃ人は通らない道だろうけど、こんな外でキスをするなんて恥ずかしいのに、何故だかドキドキしてしまう。

「……りゅ、のすけ、くん……ッん、」
「いいから、黙って――」
「――ッ」

 だけど、そんな中でもやっぱりこんな所でキスなんてと思って竜之介くんから離れようとするけど、彼は離すどころか私の後頭部を押え付け、何度も何度も唇を重ねてくる。

 そして、竜之介くんが舌を割入れようとしてきた、その時、

 少し離れた所から人の話し声が聞こえてきた事で、竜之介くんは我に返ったかのように私から唇を離すと、バツの悪そうな表情を浮かべながら「……ごめん」と一言謝り身体も離す。

 驚いたけど嫌だった訳じゃないし、こんな竜之介くんは初めてで、どうすればいいのかと私は戸惑ってしまう。

「……竜之介くん、あの、ね……今の、嫌じゃ無かったけど、やっぱり……こういう所は恥ずかしい……」
「……うん、ごめん」
「その……家で、二人きりの時なら、大丈夫……だから、ね?」
「……それって、誘ってる?」
「…………そういう事、聞かないで。恥ずかしいから……」
「だって、亜子さんの口から聞きたいんだもん」
「もう。とりあえず、凜迎えに行こう?」
「そうだな」

 何とか機嫌を直してくれたらしい竜之介くんと手を繋いだ私は、保育園までの道のりを歩いて行った。

 だけど、折角機嫌が直った竜之介くんを再び不機嫌にする出来事が、保育園に着いた瞬間に起きる事に。

「あれ? 亜子さん?」
「え、良太くん? どうしてここに?」

 凜を迎えにやって来ると、何故か保育園に良太くんの姿があった。

「ああ、今日から姪っ子がここに通う事になって、その迎えを頼まれててさ、今ちょうど迎えに来たんだ」
「そうなんだ?」

 なんという偶然だろう。

 こればかりは仕方のない事ではあるけど、こんな偶然、当然竜之介くんが良く思う訳はなくて、

「亜子さん、帰ろう」
「あ、う、うん……それじゃあ良太くん、またね」

 迎えを待ってた凜が一目散に竜之介くんの元へ走って来て抱き着くと、凜を抱き抱えた彼はこちらを見る事無く「帰ろう」と言ってさっさと歩いて行ってしまったので、私は急いで後を追いかけたのだった。
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