『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
「ね、ね・・同窓会があったの? 男子も来たの? 何組くらいカップルできた?」


 矢継ぎ早に質問してきた経理事務の寺島まあこ女子は中途入社組で
私より社歴は2年先輩の42才独身だ。


 年齢は私の9才年上になる。人の恋バナが好きな人だから要注意だ。


「同窓会とかじゃなくて親しい友人2人と私との3人での飲み会でした」


「なぁんだ、男はひとりもいなかったの? つまんなぁ~い。

でもさぁ根米さんったらお肌ツルツルンで潤ってるから~、てっきり彼氏でも
できたのかなぁ~って。焦っちゃった。うふふ。

 根米さん、私たちってシングル《独身》という同じカテゴリに属してるでしょ?

 だぁかぁら、抜け駆けなしで勝負しましょ」



『抜け駆けなし? 勝負? はぁ~? しかも33才の私と42才のおばはんなアンタとかよ』
 
 私は思い切り胸の内とはいえ少々荒っぽい言いかたをしてしまった。


「お肌がきれいになったのは最近評判の良いちょっとお高めなクリームに変えたからかも。

 そんなふうに言われてうれしいです。

 でも・・抜け駆けとか勝負とかってよく分からないんですけど」



「とぼけなくていいわよー。

 この春地方からここ本社に転勤で来た営業の神尾くんのことに決まってるじゃない。
 
 久々の大物だもの。皆《みんな》結構狙ってるみたいよ。

 そんな中でもあなたが今一番彼と親しそうじゃない? 
 
 先週事務方の女子何人かで久しぶりにお茶して帰ったんだけど、
話を聞いてるとさぁ、皆見てないようでちゃんと見てるんだよねー。

 根米さんが抜け駆けして彼にちょいちょい、ちょっかい出してたの
モロバレなんだよね。皆あきれてたわよ~」


「え~、心外だなぁ。
 私そんなに神尾くんに話し掛けたりしてませんよ」


「それがさぁ~、お茶した日にばっちりバレちゃってるんだから、
しらばっくれてもだぁ~め、駄目ダメよ。
 

 永野ちゃんが、あなたが居残り《残業》時に神尾くんの席で話し込んでたのを
2度ほど見てるって。

 それと今田さんも販売所《スーパー》のバックヤードであなたたち2人の姿を
一度見たことがあるって言ってたわ。

 誰にも気付かれてない見られてないって思ってるかもしれないけれど、
それこそ壁に耳あり障子に目ありなんだから」


「いつのことを言われているのか分かんないですけど、仕事上の悩みを
聞いてあげたことはあるのでそのことかも。


 だけどそういうの神尾くんにだけじゃあないですよ。

 今名前の出た永野ちゃんが入社してすぐの新人の頃も悩みの相談相手に
なったこともあったのに、その当人からそんな風に告げ口みたいに言われてたなんて
ちょっと私、ショックだなー」
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