限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

02 こうするしかない

 長い足で逃げるように去って行ったギャレット様の背中は、あっという間に見えなくなった。

 我に返って恥ずかしくなったのかもしれない……普段なら、あんなことを口にするような人ではないもの。

 私が好きだと言いつつ好きではないような素っ気ない態度を取っているから、彼だって何故なんだと混乱してしまうんだろう。

 純粋な人には素直な気持ちを返してくれる女の子が似合うと思う。言えないことが多すぎる私なんかでは……絶対なくて。

 いけない。彼を騙すこと、それが私の役目なのだから、仕方ない。

 自分の役割を果たさなければと、知らずため息をついてしまった私が、妃教育の続きを受けるためいつもの部屋に戻ろうと歩き出した。

 すると、鋭い目つきでこちらを睨むご令嬢と出くわした。二度目のため息を飲み込んで、私は彼女に向け無言でカーテシーをした。

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