限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

14 襲撃

 仕事の出来るイーサンは私が行くべき場所を、御者へと既に指示を出してくれていたようだ。早足の馬は迷いなく、止まることはない。

 ということは、私は彼に大富豪の妻になる未来を捨て、無謀な道を選ぶことを読まれていたことになる。未練がましい私があけすけに見られているとしたら、嫌だ。

 イーサンはそういえば、前にも王妃も王には逆らえまいと言っていたような気がする。

 私がギャレット様を好きになってしまったことも、共犯者の彼にはお見通しだったんだ。

 ギャレット様が現在居るという離宮は、そう離れてはいなかった。

 王族の急な遠出ならば、警備の問題もある。そうするのなら、選択肢は少なかったのかもしれない。

 平民なら思いつけば、すぐ外国にまで旅行に行けてしまうのに、何でもその手にしている王太子の彼にとってはそれは気軽に出来るものではなかった。

 未来の王となる王太子ギャレット様は、その手に持つ権力は人の人生を狂わせることも出来る大きなものだ。きっと、誰もに羨まれるだろう。

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