限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 その代わり、彼は常に人目に晒され、いろんなものに雁字搦めに縛られ続ける。何が良いか悪いか、それはその人が選ぶことだけど。

 ギャレット様は剣で身を立てて生きていく方が、自分に向いていると言っていた。

 あの人は私にだけ、秘密だと教えてくれた。

 望まぬ道を行くとしても、彼は周囲にそれを気がつかせなかったことになる。

 離宮は馬車で、数時間掛かるだろう場所だ。この間に彼に何かあればと思うと、どうしようもないけど気が急いた。

 馬車を降り慌てて飛び込んだ離宮の門番は、王太子を捨てた女として有名な私の顔を知っていたようだ。あからさまに嫌な表情になった後に、吐き捨てるようにして言った。

「ギャレット殿下に、何の用ですか。こんなに早く大富豪に捨てられて、王子に泣きつきにきたんですか?」

 完全に馬鹿にして嘲るような言葉に、傷つかなかったと言われれば嘘になる。

 そうなるだろうとは思っていたけど、私はイーサンの邸にずっと居て、国民たちが色々と噂している程度にしか聞いていなかった。

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