限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 こうして、わかりやすい悪意を向けられ嫌われていることを知って、やはり傷ついた。一年ほど前から覚悟していたことだけど。

 それより、早く命を狙われているというギャレット様に会いたかった。

「……いいえ。ですが、殿下にお伝えしたいことがあります。お願いします。急ぎ取り次いでください」

「殿下は……お会いにならないと思いますよ。貴女はご自分が国民の間でどう言われているのか、知っているんですか」

 若い門番は眉を寄せて、とても不快そうだ。ええ。もちろん。それは、知っています。

 自分から希望したくせに王太子妃の重圧に負けて、平民の大富豪の手を取った情けなくて弱くてだらしない、借金まで抱えていたという頭の弱い女。

 別に良いの。

 今の私は、ギャレット様が助かればそれで良い。

「知っています! お願いします。彼の命が危ないので」

 その時、城の中に入ろうとする何人かの不審な男を見えたのは、ほんの偶然だった。彼らは違う門番に紙を見せ、簡単に通っていた。

 同じような人が沢山居るのに、おかしいと思うのはおかしいかもしれない。けれど、どうしても違和感が拭えない。

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