限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 何もかもをすべて知る共犯者のくせに何を今更と私が眉を寄せれば、イーサンはわざとらしいくらい眉を下げ悲しそうな顔をして言った。

「それでもだ。自分の婚約者の情報だって、良く調べないとは……ローレンが我慢を重ねていることは、君を良く見ていればわかることだろうに」

 そういった鈍いところのあるギャレット様のおかげで、私の下手な演技だってバレていない。それは、私たちのような後ろぐらい立場にあるのならば、喜ぶべきことのはずなのに。

 喜べるはずもない。

 面白がっているイーサンの言いようが癇に障った私は、彼から距離を取って睨んだ。

「ギャレット様は何も悪くありません。私が何も言わないのだから……これも何もかも、私の事情よ」

「おいっ……そこのお前、俺の婚約者に何をしている」

 イーサンの向こう側からギャレット様の声が、聞こえて。

 私とイーサンの二人は目を合わせ、すぐに離れると他人を見るような表情へと戻った。いけない。ここで下手を踏めば今までの苦労、何もかもが無駄になってしまう。
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