限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 彼から見ても、私は誰がどう考えてもギャレット様が好きで……それは隠せていないと思う。どれだけ冷たく対応したところで、彼本人には避けられている理由がわからないだろうから。

「ギャレット様に慣れることなんて、私にはきっと出来ないと思います……」

 彼という存在に慣れてしまえば、今の婚約者という立場を手放すことが耐え難くなってしまうだろう。

 そうすれば……メートランド侯爵家はどうなるの?

 イーサンが気まぐれを起こして借金は肩代わりしてもらえても、真面目なギャレット様は、自分を騙そうとした私をどう思うのだろうか。

 それに、ギャレット様は万が一許してくれたとしても、王は私を許さないだろう。現王イエルク様は規律に厳格で、不正は決して許さない人としても有名だ。

 ……それに、彼の義母である王妃様は、裏切った私をどうするだろうか。

 彼女のしようとしたことは、ただ義理の息子に自分の姪を充てがおうとしただけ。

 国家転覆を企んだ訳でもなければ、実家バイロン伯爵家に忖度したと少々醜聞が広まる程度で王妃の座は損なわれることなく彼女のものだろう。

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