女嫌いな騎士団長が味わう、苦くて甘い恋の上書き
 うちのルドルフ団長の女嫌いで有名で、しかも彼が一番嫌いそうな、色気ムンムンな悪女にそんなことをするわけがない。

 どう考えても、何かに操られている。

 これは絶対おかしいと踏んだ周囲の部下何人かで、必死で追い縋る団長を取り押さえて、暴れ回る彼を屯所まで苦労して連れて帰ってきたのだ。

 正気に戻っての団長は、先ほどの自分の行動が信じられなかったのか、しばし呆然としていた。

 そうよね。当然のことだろうと思う。うん。惚れ薬を飲まされたことがないけど、何となく想像つく。

 あ。私は書類を届けに行くついでに、なんとなく団長の見回りにくっついて行っていた騎士団事務担当している新人ローラです。よろしくお願いします。

 ちなみに現在の状況は優秀な団員たちが総出で原因究明に乗り出し、あの未亡人が惚れ薬を買った魔女のお店までは判明しております。

「あの女……確か、王に言われて出席した昨夜の夜会でも居た。そうか……その前に給仕に渡されたワインを飲んで……その後ですれ違ったんだ。給仕は買収されていて……俺は薬を盛られたのかもしれない。失態だ」

「味では、気がつかなかったのか」

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