鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
光鬼
「うっ……ぐすっ」


樽の中に放置れてどれくらいの時間が経過しただろうか。
太陽の光も当たらないハナには検討もつかなかった。

ほんの10分だったかもしれないし、もう何日も経過したようにも感じられる。
それくらい、樽の中は心細くて寂しかった。


「お願い誰か、戻ってきて……」


ハナの声はか弱く震えて涙で濡れる。
今の季節はまだいいかもしれないが、これが真冬だったとしたらとっくに死んでしまっていたかもしれない。

ハナがギュッと自分の体を抱きしめたときだった。
ガサッと草木をかき分けるような音が聞こえてきて息を飲んだ。

木の隙間から外を確認してみるけれど、ここからではなにも見えない。
けれど草木をかき分けるような音は徐々に樽の方へ近づいてきている用に感じられる。

まさか、野犬?
狼だったらどうしよう!

獣たちが人間の匂いを嗅ぎ分けて近づいてきたのかもしれない。
ハナは両手で自分の口を覆ってできるだけ声を抑えた。

呼吸すら止めてしまいそうになったとき、ザッと樽の前で音がして、止まった。
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