鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
『あまりに不作が続くとな、それは鬼のせいなんだ。鬼に気を鎮めてもらうために、お供え物をする』

そのお供え物は僅かな作物であったり、野ウサギであったり、幼い子供であったりすると言う。
今思うと幼い子どもというのは口減らしのための口実としてお供え物にしていたのだろうと考えられる。

では、まさか、自分も……?
自分は鬼のお供えものにされてしまったんだろうか?

今年は村に疫病が流行ったこともあって作物の管理が行き届いていない。
それが原因で口減らしを……?

そこまで考えてハナはブンブンと左右に首を振った。

ハナはもう子供ではない。
暴れて逃げられる恐れがあるハナをここまで連れてくるのにはもっと他に理由があったはずだ。
どうしても必要だったなにかが。

狭い樽の中では思考回路は悪い方へ悪い方へと転がっていく。
どうにか気持ちを鎮めようとしても難しく、つい大きく息を吐き出したしまった。
そのときだった。
< 16 / 77 >

この作品をシェア

pagetop