鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
「ハナ。俺にとってハナは特別な存在だ。生贄なんかじゃない」


光鬼の大きな両手がハナの両手を包み込んだ。


「この魚を食べれば生涯幸せになれると言われている。ハナには、そうなってほしい。そのためにとってきた」


光鬼の一語一句がハナの胸に染み渡っていく。
村の人々も優しかったが、ここまで自分を思ってくれていた人はいなかったかもしれない。

光鬼はハナにふれるとき、いつも優しさをたたえてくれていた。
ハナはそっと自分から光鬼に身を寄せた。

光鬼がみじろぎをして離れようとするから、その体をギュッと抱きしめた。


「あなたが怖い鬼だなんて、もう思わない。これほど暖かなんですもの」


光鬼の逞しい胸に耳を寄せると確かな鼓動が聞こえてくる。
それが心地よく感じられてハナは目を閉じた。

光鬼の両手が壊れ物でも扱うような優しさでハナの体を抱きしめた。
ハナはそっと光鬼に唇を寄せる。
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