鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
「鬼は俺たちを全滅させた後で、俺達の死体を喰うつもりだ!」


誰かが声を大きくして言った。
どんな薬を用いても治らず、どんな薬草を口にしても治らない。
こんな病は初めてのことで全員が不安におののき、早く原因を探り当てて事態を沈めたいと考えていた。


「それなら鬼を殺せばいいのか?」

「鬼を殺すことなんできるのか?」

「狭霧山にいる鬼の名前はというらしいな。村に擦り注ぐはずの太陽光をすべてあの鬼が独り占めしてるって噂だ。そんな意地の悪い鬼を、本当に相手にするのか?」


集まっている村人たちは一晩中どうすればいいか考え抜いた。


その結果……「鬼を怒らせたくはない。だけど疫病は早く収まってほしい。そうだ! 村からひとり鬼に捧げようじゃないか!」
村の誰かが犠牲になる。
それと引き換えに疫病を終わらせてもらおうと考えたのだ。


「でも、一体誰が生贄になるんだ?」


外が白み始めた頃には、そんな話しになっていた。


「生贄といやぁ、若い女だ。村にいる若い女をひとり差し出すんだ」
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