鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
☆☆☆

山での暮らしは順風満帆だった。
ふたり繋がりあった日を堺にして、心の距離が随分と近くなった気がする。

行為の翌日はさすがに起きることができなかったハナだけれど、その日は1日中光鬼がハナの世話をやいてくれた。
あの虹色に光る魚を食べたのはその日の夜のことだった。

光鬼はなれた手付きで枝に魚を突き刺して、焼いてくれた。
香ばしくていい香りが洞窟内に漂ってきた時、ハナはやっと体を起こした。

まだ下半身に違和感が残っていたけれど、もう痛みは感じない。


「ほら、食べろ」


枝で作った箸で器用に魚の身をほぐしてハナの口元へ持ってくる。
そこまでしてくれなくても大丈夫だと思ったが、ハナは素直にそれに甘えた。

初めて食べる幻の魚は油が乗っていてとても甘く、身も引き締まっていた。


「すごく美味しい」


夢中になって食べるハナを、光鬼は幸せそうに微笑んで見つめていたのだった。

それから2日後。
ハナは光鬼と共に川へやってきていた。
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