鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
実際に人間たちの力では光鬼の屈強な筋肉を切り裂くことはできなかった。
どれも致命傷には至っていない。


「それより、俺のところに戻ってきてよかったのか?」


その質問にハナは大きく頷いた。


「あの男のことを、好きだったんじゃないのか?」

「それはもう昔のことよ」


確かにハナは武雄に恋をしていた。
きっとお互いに同じ気持ちを持っていて、いずれ夫婦になるものだと思っていた。

ハナが生贄に選ばれることがなければ今でもそう思っていただろう。


「今はもう、もっともっと大切なものを見つけてしまったの」


ハナは光鬼の手に頬ずりをして呟く。
川の水面で小魚が飛び跳ねて水しぶきが舞う。


「俺のせいか……」
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