偶然同じ集合住宅の同じ階に住んでいるだけなのに、有名な美形魔法使いに付き纏いする熱烈なファンだと完全に勘違いされていた私のあやまり。
 マックロイさんは成功した冒険者で大金持ちでもあり彼の持つ金髪碧眼で王子様のような美々しい容姿もあって、人気があり女性にとてもモテる……らしい。

 なるべく足音を立てずに続く私が何を言いたいかというと、そうつまり……単に帰り道が同じだけの私が、マックロイさんに懸想していると勘違いされていることだ。

 これまでに自分の住む階にまで上がり、階段に近い部屋に入るマックロイさんが扉をパタンと閉める前に、続いて自分の部屋へと帰ろうとする私をチラッと見たことが何度かあった。

 別にそれまでも親しくもなかった間柄だけど、冒険者ギルドでの彼は目に見えてよそよそしくなった。

 私が受付に座っている窓口には絶対に来ないし、なんなら他の受付嬢の窓口が多忙で時間が掛かりそうでも、暇そうな私の窓口には絶対来ない。

 そんな風に避けているマックロイさんを見て、私は彼にどう思われているのか完全に理解した。

 あ。これ私のこと、とんでもなくヤバい女だって、誤解している。

 けれど、私は本当に偶然マックロイさんと同じ階の部屋に住んでいるだけなので、彼の誤解でしかない。

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