泡風呂を楽しんでいただけなのに、いきなり空中から落ちてきた異世界騎士が「ここに居たら戻れるかもしれないから、離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

ーーーーーパシャン!!

 ふわふわもこもこの濃密泡風呂を楽しんでいたら、いきなり顔に水飛沫が当たって私は呆然とした。

「えっ! まじでびっくりした」

 それはこっちの台詞などと言う言葉は、咄嗟には出て来なかった。

 皆、知ってる? 人って驚いた時には一旦思考と動作が一時停止(フリーズ)してしまうものらしい。

 思いもしなかった危機に直面して、余計な動きをしないため? その辺は私も詳しくないから、わからない!

 そうそう。私がなぜ一人で泡風呂を楽しんでいるかという状況をまず、説明しよう!

 社会人で働き始めて、今年で三年目の夏。

 天涯孤独の身で少しでも稼ぎの良い仕事に就職するために上京して来た私に東京という、大都会は冷たい。田舎者のために空気もなかなか読めない。

 スマートなエリートが集う職場にもあまり馴染めず、それでも生きていくためには仕方ないと割り切ってこれまで必死に働いて来た。

 だけど、何かを頑張ったのなら、ご褒美が欲しい。それは、自分から自分にでも良いと思う。この世の全ての存在が、伴侶が出来ると思ったら大間違いである。

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