『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
 バカな奴だ。


 相手が自分にとってこれからの長い道のりを共に歩んでいきたい女性なのか、
 見極めることを丸ごと放棄したような結婚。


 俺なら恐ろしくてそんなことで結婚を決めたりはできないな。

 我が弟ながら、何も物事を深く考えられない頭のカラッポな人間だったのかと
知ることになり、ガクリときた。


 しかし、これまで許嫁のことにしても親に逆らうことなくきた俊介に
最後の最後でやらかされ、親の落ち込みようったら見ていられないほどだ。


 うちの会社の経営はこれまでもさほど悪くはないはずだから、
絶対古家家と繋がらなければならないという強いお家事情というものはないはず。


 でも、父親は石橋を叩いて渡る人なので親父にしてみれば
ないよりはあった方が安心なのだろう。

 保険、という名の安心。 
 

 またそれだけではなく氏素性がしっかりしていることと、特に母親が
苺佳ちゃんの気質に惚れこんでいることもあるのだろう。

 嫁姑問題は古今東西難しいものがあると聞くからな。




 俊介がやらかすまではとんと記憶の方なたへ飛んでいってたようなのに
今回のやらかしの後、何故かぽっと俺は幼い頃に聞いた、いつかの話を思い出した。


 リビングで話し込んでいた両親の会話。


「年齢的に考えると、英介でもいいのよね、苺佳ちゃんとの縁談」

「英介は利発な子だ。容姿にも兄弟の中で群を抜いて恵まれてる。
 なかなか本人が良しとはしないだろう。
 それと将来兄の恵介の右腕として我が社を盛り立ててもらわねばならないからね。
 苺佳ちゃんを許嫁とさせてもらうのは、やっぱり俊介にしよう」



「そうね、養子に入りゆくゆくは古家さんところの事業を継いで。
 うちでは恵介がいるから俊介は社長にはなれないけど、古家さんのところへ行けば
行く末は社長の座が約束されていて有難い話ですね」

 
 子供たちの縁結びの話は、跡継ぎのいない古家さんからの提案だったようだ。

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