『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
「無理してないから。苺佳ちゃんなら不足はないよ。

 小さな頃から見てきてるけど、可愛くて性格も良さそうだし。

 交際して彼女に気に入ってもらえるように頑張るよ」
 



 子供の頃から知っている間柄というのもあり、その後、半年ほど
付き合って俺たちは両家から祝福され、結婚した。





◇興信所


 ミラって誰? 夫との馴れ初めなどあれこれ考えているうちに
朝になってしまった。


 眠れなくて寝返りを打ったりしてモソモソしている私の横で目覚めた夫が
背中越しに腕を回してきて、耳で『おはよ』と囁いた。


 いつも触れてくるわけでもないのにこんな日に限って
甘い声で囁いてくるなんて、なんてこと。


『ミラって誰なの?』と訊いたら夫はどんな顔をするだろう。


 完全なるクロならなおさらだけど、グレーだったとしても
私はそんな質問をすること自体、嫌だ。


 この後、いろいろ考えなければならないこと、やらなければならないことを
思うと憂鬱になる。


 今までならやさしい抱擁と甘い声は私に至福の時をもたらせてくれたけれど、
もしかするとこれが最後の至福の時になるかもしれない。


『おはよう』
 私は身体を反転させ、夫の胸に顔を埋め片手を脇に滑らせ彼を抱きしめた。


『これが最後の抱擁になりませんように』と願いながら。


 たまには送迎時、ちらっとでも瑤ちゃんに会えないかなとしばらくの間期待して、
朝な夕なに眞奈の登園やお迎えに行くたびキョロキョロしていたのだけれど、
やっぱりたまにお見掛けするのは比奈ちゃんのおばあちゃんで。



 園でおばあちゃんに会うと少しお話することもあるけれど、最近は
ほんとに挨拶程度。


 何をお話すればいいのかお互い分からない感じ。


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