放課後はキミと。


***


「よし」
あたしは意を決して、スマホの電話ボタンをおした。

数コールの間に深呼吸する。
こんなに電話が緊張するなんて、初めてだ。

「はい」
電話だからか緊張した様子の紗世の声が聞こえて、あたしは少し笑ってしまった。
「あ、紗世? ごめんね、今大丈夫?」
「ドラマめっちゃいいとこだったんだけどー」
「え、ごめん。じゃあかけ直す」
心の準備を整えるのに必死で、紗世が21時のドラマを見ていることは失念していた。
「うそうそ、いいよ。どうしたー?」
電話の向こうでケラケラ笑う紗世。

ギュッとスマホを握りしめて、一度唾を飲み込んだ。
「あのさ、噂の、こと、なんだけど⋯」
「あー⋯うん」
紗世の声のトーンが低くなって、どうかした?と気遣うようにいわれた。
「紗世は、なにか、いわれてたりしない?」
「⋯⋯え?」
思ってもみなかった言葉だったのか、紗世は不思議そうにそういった。
「変な噂、紗世もいわれて、迷惑かかってない?」


ズキンズキンと胸が軋む。
逆の立場だったらあたしなら、というのはあくまであたしの場合であって、微かな希望にすぎない。
やっぱり、紗世は噂に傷ついて嫌になってないか、あたしは不安なのだ。


「え、りん、馬鹿なの?」
「え?」
ズキズキしながら答えを待っていたあたしは、まさかの返答に思わず声が漏れた。
「なんで一番傷ついている人が、心配するの?」
クスクス笑いながら紗世は続ける。
「もしかしてだれかがなんかいってた? 私の噂」
「いや、それは⋯」

まさかパパ活仲間だと思われてるなんていえなかった。

「はっきりいってもいい? すっごいどーでもいい」
「え?」
「私はそんな噂、どーだっていいよ。だから迷惑とか考えなくていい」
「どーでもいいって⋯⋯」
「だって私なんかに向けられる噂より、りんに向けられる噂の方がずっとしんどいってわかってるから」
「⋯⋯」
「りんの心をあんなやつらに傷つけられる方が私は辛いよ」
「紗世⋯⋯」
その言葉は嬉しくて、今すぐ泣き出したかった。
紗世に抱きついて泣きたかった。

< 38 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop