放課後はキミと。


ずきん
ずきん

なんだ。なんだこの気持ち。

どす黒いものが、心の中にひたひたと広がっていく。
じわじわとそれはあたしを蝕んでいって、思考を停止させていく。

なんで。
なんでよ。

その腕を引きたいのは。
笑顔を向けたいのは。
瞳に映りたいのは。

――あたし、なのに。

腕を引いてたのも。
笑顔を向けているのも。
瞳に映っているのも。

――だれだかも、どんな関係かもわからない。でも確実にあたしよりは近い距離の、彼女。


その見えない距離が、ただただあたしの心を粉々にしていく。


きゅっと唇を引き結んで。
爪が皮膚に食い込む感触でなんとか理性を保つ。

「いいよ、涼村くん。あたし、一人で帰れるし」
これ以上、この感情に支配されたくなくて、落ちたのはそんな虚勢。

本当は、一緒に帰りたい。
今すぐ彼女から引き離して、笑いあって帰りたい。

でも、もちろんそんなことできない。
だってあたしは、ただの"クラスメイト"

「ほらあ、この子もこういってるし」
佳耶さんはあたしの言葉に嬉しそうに涼村くんにいった。
「え、でも」
「あたしも、用事あったの思い出したの。だから、大丈夫」
なにかをいいかけた涼村くんを遮って、あたしは見せかけの笑顔を張りつけて笑った。
「……そっか。わかった」
涼村くんはあたしのその言葉に後追いせず、あっさりと引き下がった。

その“あっさり”に少し残念になる自分がいる。
突き放したのは自分のくせに、それでも食いついてくれるんじゃないかって期待して。

……涼村くんがあたしのこと、好きか試そうとしているこんな自分も、嫌だ。

「うん。それじゃあ、また明日ね」
あたしは頑張って微笑んで、手をあげて、踵を返した。

もうこの場にいたくない。
でも変にも思われたくない。

「……あ、うん。じゃあ」
「またねークラスメイト、さん」
彼女の挑発するようなその言葉を背に聞きながら、胸がまたズキズキ痛むのを聞きながら、それを振り払うように、あたしは速足で歩いた。

こんな感情があるなんて、知らなかった。
こんな気持ちになるなんて、思わなかった。
胸にこみ上げる思いは、ただただあたしを切りつけて。

それなのに、もう一度その姿を見たくなって。
つい後ろを振り返ってしまった。

遠くに見える二つの影は、恋人同士のように重なっていて。
……あたしは、人一個分の距離があいているのに。
彼女は、あいていない。

それはあたしと彼女の差を思い知らされるようで。


見なければよかった、と心の底から、思った。
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