放課後はキミと。


***

涼村くんは、とてもとてもスパルタでした。

「なんでこんなんもわかんねえんだよ。あんた中学英語からやり直せ」
「これ宿題な。次全問合ってなかったら倍出すから。覚悟しとけ」
「授業中ねるなよ。寝たら宿題倍だからな」

補習は週3回だと決めたけれど、宿題のせいで英語ばかり見て死にそうです。
一瞬宿題をしないでおこうか、とも思ったけれど
それはそれでその後が恐ろしいので勇気がでませんでした。
夢にまで単語の嵐がでてくる。そう。悪夢です。

英語の時間に寝ることはすっかりなくなった。
それを先生が嬉しそうで嬉しそうで。
そして涼村くんはあたしが見たときは視線が合わないのに、
監視してる感がすごくある。

もうやだああああ。はやく一か月終わってほしいいいい。
このままではあたしは干からびてしまう。

そんな生活が一週間続いた頃。

「りんさー最近なんで先生と漫才しないの?」
唯一の昼食の癒しタイムに紗世に聞かれて、思わず前のめりになった。
「漫才してるつもりないんだけど!」
「あ、そうなんだ? まあいいけど。やっと危機感持つようになったの?」
艶のある黒髪をくるくる手に巻き付けながら、さして興味もなさそうに聞いてくる。
「うん、まあ、ね」
歯切れ悪く目を泳がして思わず彼を見てしまう。

主に制裁の方に。
涼村くん、怖いんだもん。

「それとさー」
ふいに声を潜めて、さっきまで遊んでいた髪を離して
内緒話をするようにあたしに耳打ちしてきた。
「最近涼村くん、英語の時間だけやたらりんのことみてない?」

……ああ、そのことですか。

理由はわかりきってて、そのことを考えるだけで頭がズキズキする。

もうまじで勘弁してくれ。

「熱い視線をちょいちょい送ってるからさー気になって」
さっきまでとは裏腹にきゃっきゃっ笑う紗世。
それを尻目にげんなりしていくあたし。
「そんな甘くてきゅんきゅんする感じじゃないよ……」
「じゃあなーんであんなみてるの?」
好奇心満々の目があたしを捕らえて離してくれない。
「しらないよー」
ふいっと無視を決め込んでおかずを口に入れた。

極力だれにもばれないようにしないと。
どこから漏れるかわからないし。


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