相思相愛・夫婦の日常~羽♡兎編~
俺が兎ちゃんを救い出した日の話
それから二週間後━━━━━━

「今日から入った、新宮(しんぐう)くんだ」

「え……」
(この人……)

響人(ひびと)…!?」
稲穂が目を見開いて驚いている。

新宮 響人は、稲穂と芽紅の同期の学生でこの前挨拶した男の一人だ。

“王宮さん、新宮くんに教えてあげて?”
店長に言われた、羽咲。

「この前はどうも!
新宮 響人です!
響人って呼んでください!」

「あ…いや…それはちょっと……
えーと…改めて。
私は、王宮です!よろしくお願いします」

「名前、教えてください!」

「え?だから“王宮”です」

「な、ま、え!それは、苗字!」

「あ、羽咲です」

「うさき…
…………あ!兎ちゃんだ!名前まで可愛いっすね!」

「え……!?」



『クロ!俺の姉ちゃん!
“羽咲”!』

『“うさき”?
なんか、兎みたいだな!ちっちゃいし、可愛い!
じゃあ……兎ちゃんだ!
フフ…名前まで可愛い!』

『だろ?
俺の自慢の姉ちゃん!』



「━━━━ぎちゃん?
兎ちゃん!!」

「あ、はい!」

「どうしたんすか?」

「あ、いえ!
あ、あの!
“兎ちゃん”呼びはちょっと……」

「え?ダメっすか?」

「ごめんなさい。
その呼び方は、特別なので…!」

「“特別”
…………んー、わかりましたっ!
じゃあ…うさちゃんで!」

「あ、それならまぁ…」

そこに、稲穂が来る。
「響人!!あんた、何してんの!?」

「は?バイトしにきた」

「違うでしょ!?
羽咲さんに会いに来たんでしょ!?どうせ!」

「いいじゃん!」

「言ったよね?
羽咲さん、旦那がいるって!」

「わかってるよ?
ただ、一緒に働きたいと思っただけ!
別に…人妻に手ぇ出す気なんかねぇよ!」


響人に教えながら仕事をする。
物覚えが良い響人は、あっという間に覚える。

「━━━━なんか、私が教えるまでもないですね(笑)」
「いやいや、接客業のバイトしたことあるからだし!」

「そうなんですね」
それからも響人は、人懐っこく話しかけてきていた。


そして仕事が終わり、店を出る羽咲。

「うさちゃん!」
後ろから追いかけ、声をかける響人。

「え?お疲れ様です、新宮くん」

「響人!
響人って呼んでよ!」

「それはちょっと…
せ、せめて…響人くんで……」

「ん!ま、いっか!
ねぇ、どっかでお茶しない?」

「え?ごめんなさい、私帰らないと…」
羽咲は、ペコリと頭を下げ駆けていった。
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