相思相愛・夫婦の日常~羽♡兎編~
黒羽の分厚い壁を、無理矢理ぶち破り入ってきた時哉。

その日、一緒にゲームセンターに行った黒羽。
とても楽しかったのだ。

こんなに楽しい時間は、初めてだった━━━━━━

ただ、ゲームセンターで遊んだだけ。
たったそれだけで、特別時哉が何かしたわけではない。

なのにとても楽しく、何故か自然と笑顔が出ていたのだ。

『王宮!もう一回!!もう一回、勝負して?』
『え?もういいでしょ?
どうせ、北袋くんじゃ勝てないよ?』

『そんなの、わかんねぇじゃん!
あのな!
王宮は、何でもする前から決めつけ過ぎ!!
一人がいい!とか、どうせ勝てない!とか!
だってお前、今、俺と遊んでて楽しいだろ?
スッゲー笑ってんじゃん!
な?遊んでみないとわかんねぇだろ?』


そしてその日の帰り、時哉に言われた。
『なぁ、王宮。
また、遊んでよ?』と━━━━━

黒羽は、ごく自然に『うん!』と答えていた。

それから黒羽と時哉は“クロ”“トキ”と呼び合い、親友として仲を深めていった。


時哉とつるむようになって、黒羽は喧嘩も覚えていく。
あっという間に、強くなっていった。

時哉とその場のノリだけで背中にフクロウの刺青(北袋の袋をもじって)を入れ、喧嘩三昧の日々を送っていた。
未成年ながら酒や煙草にも手を出し、警察に補導されることも多かった。

そして“王宮 黒羽に手を出すな!こっちが殺られる”とまで言われる程、恐ろしい存在にまでなったのだ。

それは━━━━黒羽には“加減”というものがないからだ。

喧嘩が始まると、手加減が出来ないので相手がぼろぼろになるまで止まらない。

いつも時哉に止めてもらわないと、止まらないのだ。

そしてそれは裏の人間にまで届き、裏の人間に声をかけられることも多くなっていた。

『クロ、ヤクザなんかに入るなよ?』

『でも、このままだとそうなるよ』

『は?あのなぁ、俺達みたいなガキが喧嘩したり、バカやったりするのと訳が違うんだぞ?
わかってんの!?』

『でもね。
俺みたいな不良、将来なんてないみたいなもんじゃん!』

『クロは、このまま……不良のまま生きてくの?
例えば、大学からはちゃんと心を入れかえようとかねぇの?
それか高校卒業したら、ちゃんと働こうとか』

『ないよ。
え?え?トキはあるの?』

『当たり前だろ!?
こんなバカやってられるのは、ガキの間だけ。
今のうちにバカやって、あとはちゃんとまっとうに生きていかねぇとじゃん!!』

『そんなの、できない』

『はぁー
またかよ!?
言ってるよな!?
何もかんもやる前から決めつけて、諦めるな!!って!!』
< 35 / 47 >

この作品をシェア

pagetop