相思相愛・夫婦の日常~羽♡兎編~
兎ちゃんが俺を救ってくれた
“俺は“王宮 黒羽”って聞いた瞬間、誰の事がわかったくらい有名だった奴なんだ”

若畑が言っていた通り、黒羽はちょっとした有名人だ。


容姿が美しく、賢い黒羽。
学生の頃からモテていた。

しかし黒羽自身は、生まれつき人見知りだったので、人との上手な付き合いが出来なかった。
基本的に物腰は柔らかいが、警戒心が強く、愛想もない。
そのため、相手との間に常に壁を作っていた。

容姿の美しさや賢さに惹かれ、人は寄ってきてくれたが、黒羽の無愛想で警戒心の強さに次第に離れていく。

そのため余計に、黒羽は人付き合いが上手く出来なくなっていった。

そんな黒羽の壁をぶち破ったのが、高校に入学して一緒のクラスになった“時哉”だった━━━━━


時哉は、黒羽とは正反対の人間。
既にこの頃、チームを束ねていた時哉。

常に、仲間に囲まれていた。

時哉は相手が誰であっても同じ態度で接し、自身が信じられる相手であれば、例え裏切られてもその人を信じきるような男だった。

黒羽にとってそれは理解できないことであり、同時に羨ましさでもあった。

『━━━━━王宮!今度、俺達と遊ばない?』
『遊ばないよ。一人が好きだから』

『━━━━━王宮!今からカラオケに行くんだ!
王宮もどう?』
『興味ない』

『━━━━━王宮!ゲーセンは?
お前、この前ゲーセンいたろ?その前も見かけたし。
好きなんだろ?ゲーム。
一緒行こうぜ!』
『行かない。一人が好きって言ったよね?』

何度時哉が声をかけても、拒否し続けていた黒羽。
黒羽からすれば、なぜこんなに断っても声をかけてくるのかが不思議だった。

『━━━━━王宮!』
『もう!何!?
北袋くん、しつこいよ!?』

『だって、仲良くなりたいんだもん!!』
『は?』

『王宮、ほんとは一人が寂しんじゃねぇの?』
『え?』

『俺さ、チーム束ねてるからかな?
色んな奴、見てきた。
だからわかんだよ。
王宮は、一人が好きなんじゃない。
傷つきたくないから、一人でいるんだ!
一人でいると、楽だもんな。
傷つかないし、傷つけない』

『………』

『試しに、一回遊んで?』

『は?』

『俺は、傷つけないって約束する!
一回遊んでみて、それでも一人がいいなら諦めるからさ!
な?一回だけ!遊ぼ?』
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