辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
妃候補になりました
 だん、と音を立てて、テーブルに短剣が突き刺さり、美しいクロスに穴が開く。

 木製のテーブルならまだしも、象牙と見紛うほど艶やかな大理石のテーブルだ。どう見ても普通の短剣にしか見えないそれが、突き刺さるわけがない。

 それに気付いた痩せ型の男は、苦笑しながら目の前の大男をなだめようとした。

「落ち着け、マルセル。まだなんの説明もしてな――」

「最近、年のせいか耳が遠くてな」

 見せつけるように短剣を引き抜いた男は、がっちりとした体格に見上げるような身長と、まるで熊のような男だった。

 野性的な髭のせいでかなり威圧感があるが、一応、今は笑みを浮かべている。

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