辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
 リティは残っていたパンの最後のひとかけらを口にすると、令嬢らしく上品に席を立った。

「あれ、もう部屋に戻るの?」

 ニナが不思議そうに尋ねる。

「ええ。だって次の試験のために勉強しなくちゃ」

 既に発表された試験の内容は、筆記試験だった。

 地味だが、基礎知識をたしかめるのにこれほど効果的なものもない。

「わあ、真面目」

「別に真面目なわけじゃないのよ。私は一般常識に疎いみたいだから、人一倍やらなきゃ追いつけないだけ」

 リティはここにきて辺境育ちが枷になると思っていなかった。

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