『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで

財前先生は付き添い用のスツールに腰を下ろした。

「分かりやすく単刀直入に説明すると、今の桃子ちゃんの心臓の状態なら、性行為自体は可能よ。ただ行為の途中で心不全が起きる可能性もある。不整脈はいつ起こってもおかしくないから、その点はちゃんと理解してて貰いたい」
「……はい」
「それから、将来、妊娠を希望する場合、出産までのリスクが高くなる。妊娠自体は問題なくても、妊娠を維持する方が何倍も大変だと思う」
「……」
「今は医学が進んでいいお薬も出てるから、胎児と母体の両方の状態を維持しつつ、できるだけ心臓の負担が少ないタイミングでの出産が望ましい」
「じゃあ、出産も可能なんですか?」
「無理だとは言わないけれど、かなりのリスクがあるからね」
「……はい」
「妊娠すると、今より血流量が増えるから、心臓に負担がかかるの。それを維持しつつ、胎児へしっかりと栄養を届けなければ胎児の成長は困難になる」
「……」
「出産方法だけど、自然分娩が無理だとは言わないけど、できれば帝王切開が望ましい。いきむことで胎児にも心臓にも負担がかかるから、無事に出産を終えるには、帝王切開の方がリスクが何倍も少ない」
「……分かりました」

先生の説明はいつ聞いても分かりやすい。

「彼のこと、好きなのね」
「……はい」
「どういう男の子なの?」
「幼馴染の子で、空手をしてます」
「あっ、もしかして、今日空手の試合を観てって、その彼の試合だったの?」
「……はい。試合中に反則技貰って、倒れてしまって…」
「それじゃあ、驚いても仕方ないか」

診察の際に、不調になった原因を話したから。

「先生がいい事、教えてあげる」
「はい?」

財前先生はそっと耳打ちしてくれた。

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