『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

ベッドに横たわる桃子は、道場で見た時よりも顔色がよくなっていて安心した。
あの時は本当に久しぶりに焦るくらい顔色が悪かったから。

桃子のもとに主治医の先生がいて、医局へと戻る先生を呼び止めた。

「すみません。あの、……聞きたいことがあるんですけど、家族じゃないとダメですか?」
「……彼氏くんだって、心配だよね」
「……はい」
「ちょっと座って話そうか」
「いいんですか?」
「医師には守秘義務っていうのがあって、話せる質問だけ答えるのでもいいかな?」
「はい、もちろんです」
「じゃあ、こっちに」

桃子から主治医は女性の先生だと聞いていた。
この病院の胸部外科医では唯一の女医なんだとか。
それだけでも安心材料の一つになる。

病だと分かっていても。
桃子の胸を俺以外の男に見せたくない。

みみっちい嫉妬なのは分かってるが、それでも嫌なもんは嫌。


通されたのは、相談室と書かれた小部屋。
医師から家族に説明する時に使う部屋だと思う。

「名前、聞いてもいいかな?」
「はい。津田 匠刀といいます。桃子とは小さい頃からの仲で、家族ぐるみで出掛けるくらいの関係です」
「うん、幼馴染だと桃子ちゃんから聞いてる」
「そうなんですね」
「空手やってるんだって?」
「はい。父親がオリンピック金メダリストで、自宅が空手道場なんです。だから、物心ついた時から空手をやってます」
「えっ、もしかして、この間のオリンピックで銅メダル取った?」
「いえ、あれは兄です。2つ上に兄がいて、その兄が」
「凄いね!空手一家なら空手も生活の一部だよね」
「やっぱり、やめた方がいいですか?」
「え?……それは私が決める問題じゃないわね」
「……」

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