『オーバーキル』一軍男子に脅かされています


「よく撮れてる」
「キャップ買って正解だったな」
「うんっ」

テーマパークで売られていた、色違いの無地のキャップ。
収益の一部がチャリティーになっていて、福祉事業団体に寄付されるという。

その色違いのキャップ姿でプリクラを撮った。
それが一番よく撮れてる。

「ちゅーは要らねぇのかよ」
「おでこにちゅーしたじゃん」
「じゃなくて」
「……えぇ」
「そんなあからさまに嫌がんなよ」
「親に見つかったら何て言われるか」
「はぁ?もうしてるのとっくに知ってんぞ」
「えぇ?!何で、どうして?いつ、どこで?」
「だいぶ前にお前んち送り届けた時に玄関先でしてんの、2階の窓から見られてるから」
「……」
「あ、おばさんじゃなくて、おじさんな」
「マジで?」
「おぅ、マジで」
「その後、お父さん何も言わなかった?」
「……釘刺された」
「何て?」
「悲しい思いだけはさせないでくれって」
「……お父さんらしい」
「だから、親公認だから」
「お母さんにはバレてないじゃん」
「どうせ、話してんだろ。桃子の両親仲いいし」
「あ」

そうかも。
うちの両親は何でも話を共有する。
私のことに関しては、どんな些細なことでも。

「何か言われたら、ちゃんと挨拶に行くし」
「いや、もう家族みたいなもんだから、今さらでしょ」
「だからだよ」
「え?」
「大事な一人娘のことなんだから、そこはちゃんとしないと」
「匠刀らしい」
「……ばーか」

さりげなく匠刀とお揃いのものが買えた。
今日みたいなことがなかったら、たぶん無理だもん。

「ちゅーのプリクラ撮る?」
「お?」

そんな嬉しそうな顔、反則だよ。
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