『オーバーキル』一軍男子に脅かされています


「モモちゃん、考え直して」
「……ごめんなさい。もう決めたことなんで」

ファミレスで夕食をとり、虎太くんと雫さんに私の気持ちを伝えた。

両親にも同じことを言われたけれど。
私なりに頑張って決断したことだから。

「あいつの荒れる姿が目に浮かぶな」
「っ……」

私の決断は、極端かもしれない。
だけど、いっぱい悩んで悩み抜いて。
そして、決めたことだから。


今まで自分で大きな決断をしたことがない。
いつだって両親に支えられてきた。

わがままを言って両親を困らせたくなかったし。
積み重なった劣等感から、自分で選択する意思もなかった。

高校受験をする時だって、中学部からの内部進学だったし。
文系より理系が得意ってだけで。
完全に安牌を選んだようなものだ。

その裏で、匠刀がたくさん悩んでることも知らずに。
私は自分だけしか考えてなかった。

「月曜日からまた登校するんで、見かけたら今まで通りに接してね」
「……それは大丈夫だけど」

今日は金曜日。
月曜日から匠刀を避けて、今日で5日目。

もう匠刀が限界だと思う。
違うな。
私が限界なんだ。
匠刀に会えないからとかじゃなくて。
匠刀に後ろめたい気持ちが隠せない。

ちゃんと匠刀に会って。
匠刀の顔を見て、自分自身にけじめをつけたい。
じゃないと、絶対に後悔すると思うから。

「明日の部活は午前中だけ?」
「うん」
「じゃあ、お昼頃にサプライズで匠刀を迎えに行きます」

本当なら3年生だから、部活は引退して大学受験真っ只中なんだろうけど。
虎太くんはたくさんの大学スカウトを蹴って、白修館大学へ内部進学することを決めた。
だから、部長ではなくなったけれど、空手部には在籍しているのだ。
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