with you on the bus

6時54分 高岬発 市民病院経由 谷地森行き

前から3番目の2人席に、1人で腰をかける。

通路側に荷物を置いて、中から英単語帳を取り出した。

なんせ、来週に英単語の小テストがあるのだ。

何ページかぱらぱらとめくり、外の景色に目を向ける。

朝日が眩しい。


私は毎朝6時54分発のバスに乗って、1時間かけて隣市の県立S高等学校に通っている。

私が電車に乗らないでバスに乗るのには、主に2つの理由がある。

1つ目は、電車が混むから。


田舎の部類に入るここ、N市。

市内では田園風景が多く見られる。

それなりにショッピングモールや住宅街も建ち並んでいるのだが……。

電車は市内で1番人口密度が多いのではないかと思うくらいに混む。

ごく稀に酸欠で倒れる人も現れるくらいの混みよう。

私は命懸けで通学はしたくないので、バスで行くことにしている。


«次は竿町二丁目、竿町二丁目でございます»
«お降りの方はお知らせ下さい»


機械のようだけど、どこか人間を感じさせるアナウンスが流れた。

竿町二丁目、と聞くと妙にそわそわして不思議な感覚に陥る。

私がバスに乗る理由、2つ目。
こちらがメインと言っても過言ではない。

バスに乗ってから早10分。

私の家がある高岬から2つほど先のところに竿町二丁目がある。

私は竿町二丁目から乗る、ある人に会うためにバスに乗っている。
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