恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
「はい、では」
絵は得意じゃないけど、取りあえず・・・
キャンバスの端に、色を塗り始めると、時間を忘れるように没頭した。
夜空に、星を散りばめた絵は完成した。
「す、すみません。つい集中して、絵の具、使い過ぎましたね。お支払いします」
「いえ、いいんですよ。描く楽しみを知っていただけたら。素敵ですよ。絵はその人の今の心情も、影響がありますから。願望が表れることもありますし」
「凄く集中出来ますね。それに色を塗るだけでも落ち着きます。あっ、そこの絵の具と初心者用の他の道具一式ください」
「はい。では、用意する間、どうぞ絵を見て楽しんで下さいね」
それが、絵画との出逢いだった。

2年間、パリで暮らし、突然、父から日本に戻って来るようにと連絡があった。
「お父様、只今戻りました」
「お帰り。早速、大事な話があるから、そこに座りなさい」
久々に帰って来ても、笑顔一つ見せない。
「今週末、お前のお見合いがある。相手は、取引会社の御曹司だ。お見合いといっても、結婚を前提だから、いいな。私に恥をかかせるようなことが無いようにしてくれ」
「お父様、私の結婚相手は自分で」
「何も出来ないお前が、唯一、私に貢献出来る事だ」
その言葉を聞いて、絶句した。
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