あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ

☂ scene 04

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 2次会がおわったころ、そとは雨だった。会計とかでばたばたしているうちに、俺は繁華街に“右ななめの子”とふたりきりでのこされた。
 カラオケのときからとなりに座っていたから、小野寺が気をきかしてくれたんだろう。けど、いっしょに帰るにしても、いつもは天気予報をみないから俺は傘をもっていなかった。すると右ななめの子がコンパクトな折りたたみを取りだして、いっしょに使おうと言ってくれたので、彼女の傘を俺がもつ格好で駅に歩きだした。
 「雨すごいね」とか、「家どっちだっけ」とか、「明日の予定は」とか、たわいない話をしながら足をすすめる。

 同じ電車にのって、窓のそとをながめると雨足がつよくなっていた。彼女の家は俺の最寄りより先だったけど、夜もおそいし送っていくことにした。彼女は「帰りこの傘もっていきなよ」と言ってくれた。

 駅についてしずかな住宅街をふたりで歩く。ひとつの傘にはいって。
 雨のせいか、それともまわりになにもないせいか、となりを歩く彼女からあまいにおいがただよってきて傘のなかでひろがる。女子大生の概念みたいなにおいだと思ったのと、俺はおっさんかとツッコむのが同時くらいだった。なじみのないにおいでどぎまぎする。
 香水かな。それとも髪につけるやつ? 千歳がヘアなんとかを変えたときは「いいにおいする?」とか絡んできてしつこかった。
 って、またアイツが出てきてるし。
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