あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
 本人とおなじで一度頭に浮かぶと千歳のことが消えなくてなぜかもやもやする。さっきはうまく消せたと思ったのに。この前の雨の日と状況がにてるから?
 でも、右ななめの子は強引に腕を組んできたりしないし、傘のなかのにおいは……しっくりこない。千歳はもっと落ちつく感じで……。

 これ以上考えちゃいけない気がしたとき、となりの彼女がそっと、傘をもつ俺の腕をつかんだ。ほら、ぜんぜんちがう。かるくふれるだけ。
 別にふりほどく必要もないからそのまま歩いた。いつの間にかふたりとも無言だった。


「うち、ここ」


 彼女がぴた、と足をとめた。目の前にアパートがある。そのまま彼女は俺と向きあって口をひらいた。


「私、ひとりで住んでるし、あがってく?」


 え、まじ、そゆこと?

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