あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ

「……」

「あんまそういうつもりなかった？」

「や、そういうわけじゃ……」


　俺がたじろいだのを見逃さなかった彼女が続ける。


「ああ、私だれとでもってわけじゃないからね。いいひといたらいいな、くらいの気持ちだったけど、中村くん気ぃ使ってくれて顔も好みだったし、好きになれそうだから」


　好き、になれそう(・・・・)って？


「してみてから考えてもいいんじゃない？　中村くんも彼女さがしに来たんでしょ、今日。まー遊び相手かもしれないけどさ」


　たしかに今日、そのつもりだった、はず。だけど、今日会ったばっかで。
　さっと頭が冷えた。

　――……俺、たぶんこーゆーの向いてないんだ。


「ごめん。俺、今日は帰るわ。おやすみ」


　そんなことを言ってその場を走り去った。家についてからハッとした。


「やば、傘もってきちゃったよ……」