あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
 こいつ……!
 やりあうのに疲れて息をつく。


「……いーかげん遅刻するし」


 軒下から雨の中に踏みだしながら口をひらいた。


「……走ろ、」


 ――ちとせ。
 小さく付け加えて足をはやめた。


「えぇ~? なーにー?」


 追いかけてくる声だけでにやけてるのが丸わかり。むかつく。


「ぜったい聞こえただろ!」

「聞こえてないー!」

「もうおわり……っ」

「も~! わたしは浅黄くんに泣かされました~! 浮気者~! 無責任男~!」

「な、」


 でかい声をだした千歳にぎょっとして振り返る。
 正門へ向かって傘をさして歩いている学生たちが、逆走していく俺たちをちょっと見やる。


「もーお前ほんとやだぁ……」


 体力じゃなくて気力がつきて、へろっと立ちどまると、どん、と追いついた千歳がタックルしてくる。
 えへへ、とふざけた声が背中に響く。


「けど、すき」

「……まじで勘弁して」


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