あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
「千歳って呼んで?」

「は」


 まぬけな声がでた。


「あー! がっかりしてるー! ちゅーして、って言ってほしかったんだー!」

「ちげぇ! 変な頼みだったから!」


 どくどく心臓がうるさい。千歳に聞こえそうなくらい。


「変じゃないよー。最近、『おい』とか『お前』ばっかりじゃん」


 こっちの気も知らないで、いや知ってか、ぶつくさ言いながらさらに身をよせてくる千歳。
 顔見られたくなさすぎて、体をひねるけど千歳がそっと手をまわしてくる。いつもみたいに強引じゃないのに、逆らえなくて。


「……ち、」

「はーやーくー」

「っ名前だけって、なんの文脈もないのにおかしいだろ……」


 ほら、せっかく覚悟きめたとこだったのに急かすから。


「ひょっとしてまだちーちゃんって呼んでるから慣れてないの?」

「ばっかじゃねーの!」

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